4月 2007

日々茶寮「連」

 4月上旬、鎌倉に里道調査で行きました。その内容については別途書きますが、調査終了後、私も大変お世話になっている『コモンズの経済学』(学陽書房)をかかれた多辺田政弘先生の娘さんご夫婦がお店を2月に出されたということで、早速、よってみることに。あいにく、夕方から春の嵐でしたが、8時過ぎにはほぼ満席状態でした。全15席のこぢんまりとしたお店で、外装も内装もシンプルで好印象な作りになっています。料理の方は、昼も夜も3つのコースから選ぶ形になっていて、旬なものをいかしながら、お刺身や焼き物が出てくるなど比較的標準的な日本料理かと思います。
 一部の器は、多辺田先生が焼かれたものが使われるなど、いろいろな思い入れが伝わるお店です。
☆日々茶寮「連」(詳細は写真をクリックしてください)
湘南モノレール・湘南深沢駅徒歩7分
tel:0467-32-6730

鎌倉の里道めぐり

 桜が散るか散らないかの日本人が美を強く感じる時期に、鎌倉の里道を歩きに行きました。里道とは「道路法による道路に認定されていない道路すなわち認定外道路のうち、公図上赤い帯状の線で表示されているもの」を指します。地区住民の日常生活に密着した道路として利用されてきた歴史があり、その敷地は、現在では市町村の財産となっています。鎌倉市の里道は総延長600キロにものぼるとかのぼらないとか言われはっきりはしませんが、相当の長さを持っているのは事実です。
 まず鎌倉市の里道の実態を聞くために鎌倉市役所道水路管理課に赴きましたが、全域の里道については質問してもまとめた資料などはないと言われたため、すぐ近くにある横浜地方法務局鎌倉出張所に赴き、今回特に注目し、歩き回ろうと考えていた広町緑地付近(鎌倉市腰塚・津:鎌倉広町の森)の旧公図を閲覧しました。写真(性格上解像度を落としています)を見ていただければわかるように、旧公図は非常に鮮やかで、赤線・青線が一目瞭然となっています。広町緑地には里道が縦横に走っていたのがよくわかります。ちなみにこの周辺は、鎌倉時代には京都から鎌倉に入る大手(玄関)だったそうです。

 そもそも広町緑地(約60ha)は、都市近郊の大規模な手つかずな私有地であったため、1973年、事業三社によって大規模開発(主に宅造)案が発表されて以来、常に開発圧にさらされてきた場所でした。地元住民は、数少なくなってしまった市内の残された緑地を保全するために反対運動を継続し、1984年には周辺8自治体により「鎌倉の自然を守る連合会」が結成されています。この団体などを中心に粘り強く運動を続けた結果、2000年には鎌倉市議会で広町を都市林として保全する「広町の緑地保全に関する決議」が採択され、2002年10月には事業三社は開発を中止し、用地(36.8ha)を市に売却することで鎌倉市と基本合意するに至っています。2003年12月、総額113億円(神奈川県20億円、国20億円、鎌倉市緑地保全基金35億円、鎌倉市38億円)で買収、晴れて公有地となり長期的な保全ができる体制になりました。事業三社以外が保有していた残りの土地もほぼ2006年2月までに買収が終わり、現在では都市林公園を目指しているそうです。
 里道の話に戻りますが、緑地保存運動に取り組んでいた「鎌倉・広町の森を愛する会」の代表(当時)の池田尚弘さんは、赤道は入会地と同様、地域住民共有の財産であり、住宅開発をすることで、その共有財産を業者が勝手に侵害することは許されないと考えたそうです(詳細については『季刊まちづくり』の該当記事をご覧ください)。そこで、ただ反対するだけではなく、この赤道を修復し、再活用することによって、忘れられていた共有性を復活する活動を展開しました。そのおかげもあって、今では下記の写真のような立派な里道を私たちが享受できるようになっています。この広町緑地の場合、身延町のように里道によって地域外からの開発を妨げることができたと結論を下せるかは難しいところですが、少なくとも里道整備が地元住民によって再び行われ始めることで里山自体(「おらが山」)と保全の重要性の再認識につながっていったことは間違いないでしょう。
rido
広町緑地の里道の詳細な光景についてはこちらをご覧ください。

地域通貨に関する記事の掲載数について

NHK-BS1で放映された「エンデの遺言」や『エコマネー』などを直接的なきっかけにして、1999年から日本では地域通貨の取り組みが本格化しました。特に、当初のマスコミは「地域の万能薬としての地域通貨」のように取り上げ、全国紙でも盛んに取り上げられました。その全国紙(朝日新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞:産経新聞は地方版検索が出来ないため割愛)において、地方版含め地域通貨に関する記事の掲載数の推移を示したのが、下部の図です。1999年頃は、地域通貨とは書かず、「ローカル貨幣」や「ボランティアマネー」などと書かれたので、単純に「地域通貨」という単語が出てきた記事だけを積み上げたわけではありませんが、はっきりとした傾向が出ています。1998年まではほとんど皆無だった地域通貨に関する記事が1999年に突然各紙に掲載されるようになり、そして2002年をピークにして掲載数が漸減しているということです。これが何を意味するのかは、私が1999年から不定期ながら実施している地域通貨の稼働状況調査の結果(後日ブログに掲載)とあわせれば、それほど意外なことはありませんが色々なことがわかってきますが、それはまたの機会に書きます。

『テキストブック 環境と公害』が出ました

 昨年の春頃から書き進めていた『テキストブック 環境と公害:経済至上主義から命を育む経済へ』日本評論社(泉留維・室田武・三俣学・和田喜彦)が、やっとこの4月20日頃に店頭に並ぶことになりました。大学学部生向けに作成した本なので、写真や図表を多用し、かなりわかりやすい作りになっているかと我ながら思っています。テキストブックという位置づけのため標準的な環境経済学やエコロジー経済学の議論も載せていますが、一方で昨今見直しが起こりつつある公害問題や、事故の隠蔽が後を絶たず、廃棄物の処分方法が未だ決まらない原子力発電所問題、さらに最大の環境破壊行為といえる戦争の問題についても取り上げています。お近くの書店等で下記のような表紙を見ましたら、一度、お手にお取りください。

リーディングリスト(2007年4月8日更新)

リーディングリスト(2007年4月8日更新)

環境関連講義やゼミナールを受講している学生の皆さんが、より理解を深めたい場合、まず下記の本の中から適当なものを読んでみるのをお薦めします。

環境問題全般

  1. 鶴見和子(1981)『南方熊楠:地球志向の比較学』講談社(講談社学術文庫)
  2. 中村尚司(1993)『地域自立の経済学』日本評論社
  3. 室田武、多辺田政弘、槌田敦編(1995)『循環の経済学』学陽書房
  4. 天野明弘(1997)『環境との共生をめざす総合政策入門』有斐閣アルマ
  5. 室田武(2001)『物質循環のエコロジー』晃洋書房
  6. ビョルン・ロンボルグ(2003)『環境危機をあおってはいけない』文藝春秋
  7. 中西準子(2004)『環境リスク学』日本評論社
  8. 加藤尚武(2005)『新環境倫理学のすすめ』丸善ライブラリー
  9. 環境経済・政策学会編(2006)『環境経済・政策学の基礎知識』有斐閣
    →環境経済・政策学に関する事典で、201項目が取り上げられている。最初に何かを調べる時の足がかりになる
  10. 環境省『環境白書』各年度版(1972年〜)
    →日本の現在の様々な自然環境の現状や問題を網羅的記述

地球環境問題

  1. 石弘之(1988)『地球環境報告』岩波新書
    →世界中を駆け巡っての環境ジャーナリストによる地球環境の現状報告
  2. G.ポーター、J.W.ブラウン(1996)『入門地球環境政治』有斐閣
  3. 石弘之(1998)『地球環境報告II』岩波新書
    →『地球環境報告』の10年後の続編
  4. 松下和夫(2002)『環境ガバナンス(環境学入門)』岩波書店
    →国際政治の中で環境問題がどのように扱われてきたのかを紹介
  5. 伊藤公紀(2003)『地球温暖化:埋まってきたジグソーパズル(シリーズ地球と人間の環境を考える)』日本評論社
    →果たして本当に温暖化しているのか?もし温暖化しているとしてもその原因が二酸化炭素なのか?
  6. ワールドウォッチ研究所『地球白書』家の光協会 各年度版(1987年〜)
    →アリカの非営利シンクタンクが毎年発行している地球環境の報告書
  7. 日本環境会議「アジア環境白書」編集委員会『アジア環境白書』東洋経済新報社 隔年度版(1997年〜)

廃棄物リサイクル問題

  1. 細田衛士(1999)『グッズとバッズの経済学』東洋経済新報社
  2. 石渡正佳(2003)『産廃コネクション』WAVE出版
  3. 安井至(2003)『リサイクル:回るカラクリ止まる理由(シリーズ地球と人間の環境を考える)』日本評論社
  4. 寄本勝美(2003)『リサイクル社会への道』岩波新書
  5. 石渡正佳(2004)『リサイクルアンダーワールド』WAVE出版
  6. 環境省『循環型社会白書』各年度版(2001年〜)
    →日本の廃棄物の現状や問題点を紹介
  7. 枝廣淳子(2006)『回収ルートをたどる旅』七つ森書館

公害交通問題

  1. 石牟礼道子(1969)『苦海浄土』講談社文庫
    →水俣病に関する古典的名著で、英訳もあるほど
  2. 荒畑寒村(1970)『谷中村滅亡史』新泉社
    →足尾銅山からの鉱毒により村が一つ滅亡する過程を描いた日本における環境書の古典
  3. 宇沢弘文(1974)『自動車の社会的費用』岩波新書
    →日本を代表する経済学者が自動車交通に潜む社会的費用の大きさを実証
  4. 田中哲也(1981)『土呂久鉱毒事件:浮かび上がる廃鉱公害』三省堂新書
    →宮崎県の亜砒素鉱山土呂久の歴史、戦後間もなくの森永砒素ミルク事件や最近の和歌山砒素カレー事件に見られる砒素の毒性を改めて考えさせられる
  5. 東海林吉郎・菅井益郎(1984)『通史足尾鉱毒事件:1877−1984年』新曜社
    →足尾事件の歴史的経過を緻密に追跡した労作
  6. 宇井純編(1985)『技術と産業公害』国際連合大学
    →足尾銅山煙害鉱毒事件、水俣病、森永砒素ミルク事件、イタイイタイ病、三池炭坑炭塵爆発事件などの歴史を分析
  7. 宇井純編(1991)『谷中村から水俣、三里塚へ』社会評論社
    →近世(江戸時代)以降の日本環境史
  8. 川名英之(1987〜96)『ドキュント日本の公害』(全13巻)緑風出版
  9. W.ユージンスミス、アイリーン・M・スミス(1991)『写真集 水俣』三一書房

エネルギー問題

  1. 室田武(1991)『君はエントロピーを見たか?』朝日文庫
  2. 室田武(1993)『原発の経済学』朝日文庫
  3. 広河隆一(1996)『チェルノブイリの真実』講談社
  4. 朝日新聞山口支局編著(2001)『国策の行方』南方新社
    →山口県上関町の上関原発建設の歴史とそれを巡る諸問題を追ったインタビュー記事集
  5. 小島紀徳(2003)『エネルギー:風と太陽へのソフトランディング(シリーズ地球と人間の環境を考える)』日本評論社
  6. 原子力資料情報室編『原子力市民年鑑』各年度版(1996年〜)
  7. ジェミー・レゲット(2006)『ピーク・オイル・パニック』作品社

環境経済学・エコロジー経済学

  1. 中村修(1995)『なぜ経済学は自然を無限ととらえたか』日本経済評論社
    →新古典派経済学を基盤とした環境経済学への批判
  2. 植田和弘(1996)『環境経済学』岩波書店
    →環境経済学の標準的なテキスト
  3. 植田和弘・岡敏弘・新澤秀則編著(1997)『環境政策の経済学:理論と現実』日本評論社
    →経済学からの環境政策の提言
  4. ホワン・マルチネス=アリエ(1999)『増補改訂新版:エコロジー経済学』新評論
  5. R.K.ターナー、D.ピアス、I.ベイトマン(2001)『環境経済学入門』東洋経済新報社
    →初中級の環境経済学のテキスト
  6. 福士正博(2001)『市民と新しい経済学』日本経済評論社
  7. マティース・ワケナゲル、ウィリアム・リース(2004)『エコロジカルフットプリント』合同出版
    →貨幣単位を用いず自然環境を評価する方法を紹介
  8. ニッキー・チェンバース、クレイグ・シモンズ、マティース・ワケナゲル(2005)『エコロジカルフットプリントの活用:地球1コ分の暮らしへ』合同出版
  9. デイリー、ハーマンE(2005)『持続可能な発展の経済学』(新田功 蔵本忍大森正之共訳)みすず書房
    →ハーマンデイリーの初の邦訳本。環境問題をマクロ経済的視点で分析する。
  10. 岡 敏弘(2006)『環境経済学(岩波テキストブックスS)』岩波書店
    →学部上級から大学院レベルのテキスト。エントロピー経済学派の解説に一章分をさいたりと比較的ユニークな作り。
  11. 泉留維・室田武・三俣学・和田喜彦(2007)『テキストブック 環境と公害:経済至上主義から命を育む経済へ』日本評論社

環境史

  1. カーター・デール(1975)『土と文明』家の光協会
    →表土(topsoil)を喪失した文明はすべて滅びることを古代世界に遡って検証
  2. クライブ・ポンティング(1996)『緑の世界史』朝日新聞社
    →世界史を政治史や経済史、文化史などとしてではなく環境史として捉えた意欲作
  3. 鬼頭宏(2002)『環境先進国江戸』PHP新書
  4. 石川英輔(2003)『大江戸えころじー事情』講談社文庫
    →当時として世界一と言える人口を抱えていた江戸での資源循環のお話

自然資源管理とコモンズ

  1. 多辺田政弘(1990)『コモンズの経済学』学陽書房
    →コモンズとは日本語の入会地(村落共同体の共有地)にほぼ対応する言葉、私有でも国有でもない共有により環境保全を図る現代的な方向性を語る
  2. 宇沢弘文・茂木愛一郎編(1994)『社会的共通資本:コモンズと都市』東京大学出版会
  3. 中村尚司・鶴見良行編著(1995)『コモンズの海:交流の道、共有の力』学陽書房
  4. 諸富徹(2003)『環境(思考のフロンティア)』岩波書店
    →ソーシャルキャピタル論の環境問題への適用可能性について論じる
  5. 井上真(2004)『コモンズの思想を求めて』岩波書店
  6. 室田武・三俣学(2004)『入会林野とコモンズ』日本評論社
  7. 菅豊(2006)『川は誰のものか:人と環境の民俗学』吉川弘文館
    →江戸時代までさかのぼり、コモンズがどう発展してきたのかを「川」を通じて論じている
  8. 鈴木龍也・富野暉一郎編著(2006)『コモンズ論再考』晃洋書房 

環境とお金

  1. ステファン・シュミットハイニー、フェデリコ・JL・ゾラキン(1997)『金融市場と地球環境』ダイヤモンド社
  2. 河邑厚徳編(2000)『エンデの遺言:根源からお金を問うこと』NHK出版
     →ドルや円の投機的運用からは切り離され、福祉や環境改善に使われるような新しい通貨、地域通貨に関し、その歴史的背景を語る
  3. 森野栄一監修、あべよしひろ・泉留維共著(2000)『だれでもわかる地域通貨:未来をひらく希望のお金』北斗出版
    →地域通貨の歴史的背景と、実際の運用上のノウハウを語る手軽なガイドブック
  4. 坂本龍一・河邑厚徳編(2002)『エンデの警鐘:地域通貨の希望と銀行の未来』NHK出版
    →『エンデの遺言』の続編。銀行の側からみた社会の持続可能性とは
  5. 室田武(2005)『地域並行通貨の経済学』東洋経済新報社
  6. 藤井良広(2005)『金融で解く地球環境』岩波書店

環境、経済、社会

  1. 富山和子(1974)『水と緑と土』中公新書
    →水から環境を考える視点を確立した名著
  2. 鶴見良行(1982)『バナナと日本人』岩波新書
  3. 矢間秀次郎編著(1992)『森と海とマチを結ぶ:林系と水系の環境論』北斗出版
  4. 内橋克人(1995)『共生の大地:新しい経済がはじまる』岩波書店
  5. コンラッド・タットマン(1998)『日本人はどのように森をつくってきたのか』築地書館
    →他国と違って、最近までの日本はなぜ‘緑の列島’であったのか、アリカの徳川藩政史家が江戸時代の先人たちの知恵と努力に光を当てた労作
  6. 鬼頭秀一(1996)『自然保護を問いなおす』ちくま新書
    →環境倫理を学ぶ際の入門書
  7. 村井吉敬(1998)『エビと日本人』岩波新書
  8. 田淵俊雄(1999)『世界の水田 日本の水田』農山漁村文化協会
  9. 五十嵐敬喜・小川明雄編著(2001)『公共事業は止まるか』岩波新書
  10. ポール・ホーケン、エイモリ・B・ロビンス、L・ハンター・ロビンス(2001)『自然資本の経済』ダイヤモンド社
    →環境コンサルタントから見た環境を攪乱させないようにする新しいビジネスのあり方とは
  11. 広井良典(2001)『定常型社会:新しい「豊かさ」の構想』岩波書店
    →経済的成長という価値観から脱却し、環境と福祉の融合から新しい日本社会のあり方を提起している
  12. 天野慶之、高松修、多辺田政弘編(新装版2004年、原著1985年)『有機農業の 事典』三省堂

フィールド調査の手がかりになる図書

  1. 中尾ハジメ(1981)『スリーマイル島』野草社
  2. 宮本常—(1993)『民俗学の旅』講談社学術文庫
  3. 鶴見良行(1998)『辺境学ノート』めこん
  4. 中島暢太郎監修・京都地学教育研究会編(1999)『新京都自然紀行』人文書院
  5. 嘉田由紀子・遊磨正秀(2000)『水辺遊びの生態学:琵琶湖地域の三世代の語りから』農文協人間選書