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- 執筆者: izumi
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8月8日に北京オリンピックが開催されるが、これまでのオリンピックではほとんど話題にならなかった大気汚染問題が盛んに取り上げられている。大気汚染がひどいためオリンピックへの出場を辞退するとかしないとか、防塵マスクをつけないと気管支炎になるかとならないとか、とかくニュースとして多く取り上げられている。北京市内に行った個人的な実感としては、昨年8月末よりは今年7月末の方が大気の状況は改善されていると思う。ただ、北京上空は相変わらず非常にかすんでいて、日本で言うところの光化学スモッグ発生状態のように思える。
それでは、これまでの夏季オリンピックの中で、もっとも大気の状態が悪いオリンピックなのだろうか。それについては、すでにいくつかレポートが出ている。例えば、三菱総研の竹末直樹氏の「北京オリンピックと大気汚染」では、2004年度の北京の大気汚染の状況は、同年の東京と比べて二酸化窒素濃度は若干上回る程度であるが、二酸化硫黄濃度は約10倍、浮遊粒子物質濃度約4倍となっている。このデータだけを見ると、北京の状態のひどさが際だつが、オリンピックの開かれた時(1964年)の東京は、今の北京と比べ、二酸化硫黄が1.5倍程度と記録されている(ちなみに浮遊粒子物質は同時は測定されていないため不明、またデータの信憑性についてはここでは問わない)。つまり、東京オリンピックの時の方が、汚染の程度は高かったことが分かる。日本の場合は、1962年に煤煙規制に開始、1968年に大気汚染防止法の成立と、オリンピックを挟んで、徐々に大気汚染問題に真剣に取り組み始めており、中国もその意味では同一の歩調を歩んでいるとも言える。
それでは、北京オリンピックの開催直前の大気の状態を見てみる。北京市環境保護局によると、7月25日12時から26日12時までの日平均の汚染指数(API)は、二酸化硫黄で「15」、浮遊粒子物質(可吸入顆粒物:PM10)で「116」、二酸化窒素で「12」となっている(すべて北京市中心部の東城区東四の値)。中国では、なぜか ㎎/㎥ などといった数値表示をせず、指数しか表示していないが、国家環境保護部(日本の環境省に相当)のHPの空気汚染指数(API)の解説から単純に比例計算すると、二酸化硫黄は0.015㎎/㎥、浮遊粒子物質(PM10)は0.174㎎/㎥、二酸化窒素は0.019㎎/㎥となる。工場の一時操業停止や7月20日から自動車ナンバーによる通行規制(7月26日に市内を観察した限りでは遵守されていたが、規制適用外の自動車も多く見受けられた)などを始めているが、二酸化硫黄は日本の環境基準値(日平均0.0107㎎/㎥)から見ても大きな問題がなさそうな一方で、二酸化窒素は約2倍(基準値0.0077~0.0115㎎/㎥)、浮遊粒子物質も約2倍(基準値0.10㎎/㎥)となり、2004年と比較すると大幅に改善しているが、問題が一切ないとは言えないであろう。ただ、経済発展の進捗程度から鑑みると、後発の優位であろうか、めざましい改善と表現でき、オリンピック終了後も少なくともこの状態を悪化させない対策が重要と思われる。