多摩丘陵フットパスの小野路宿コースについて

東京都町田市を中心としてコースが設定されている多摩丘陵フットパスは、日本でもっとも初期に整備されたフットパスの一つである。町田市内の鉄道の駅周辺はベッドタウンとして開発が早くから進んでいたが、交通の便が比較的良くない多摩(北部)丘陵地帯はあまり開発が進まず、1990年代初めまで豊かな自然環境が残っていた。しかし、1993年、小野路西部地域(約105ha)において住宅都市整備公団による「土地区画整理事業」の地区決定がなされるなどして開発の危機に直面した。この里山の危機に対して、一部の地元の農家、まちづくりや環境保護活動をしていた市民団体が、反対運動を展開したのであった。

豊かな自然環境を道としてつなぎ、実際に歩いてもらうことで地元住民などにもっと里山の重要性を知ってもらうという想定で、整備されたのが多摩丘陵フットパスである。町田市の助成を受けNPO法人みどりのゆびが核となり整備が行われ、2002年に開通している。特に中心となるコースが、小野路宿コースである。小野路宿は、鎌倉古道、布田道、大山道など重要な古道が交差する場所で、幕末まで宿場として栄えたところである。

①スタート

鎌倉街道の別所バス停がスタート地点である。小田急線鶴川駅から、神奈川中央交通の「多04 多摩センター行き」に乗るのが良い。他にも「鶴31」や「桜24」も別所バス停に止まる。鶴川駅からは約12分(約5km)で着く。なお、多摩センター駅や聖蹟桜ヶ丘駅からもバスで来ることが可能である。

②谷戸

別所のバス停から少し道を戻り、集落に入っていく道を歩く。その後、右手に曲がると、左手に谷戸の風景が広がっている。右手に立派な生け垣を見ながら、谷戸に降りることなく谷戸に沿って1kmほど歩くと、恵泉女学園大学や地元の小学校の畑が見えてくる。その先のT字路を右折すると、妙桜寺の駐車場が広がっている。

写真1:別所の谷戸の風景
別所の谷戸の風景

③御尊櫃御成道

駐車場を通り抜け、自動車道(都道156号)の手前、左からV字型に合流する雑木林の道に入る。この道は、御尊櫃御成道と伝わる道で、元和3年(1617年)に徳川家康の遺骸を駿河国の久能山から日光東照宮まで運ぶ行列が通ったとされる。恵泉女学園大学や地元農家の私有地が広がっているため、私有地に入らないようにほぼ直線に歩く。この道そのものは、いわゆる赤道(里道)であり、だれでも歩くことが認められている。

写真2:御尊櫃御成道に入る手前の道標
御尊櫃御成道に入る手前の道標

④布田道

谷戸に降り立ち、恵泉女学園大学などが整備している田んぼのあぜ道を通る。谷戸沿いに歩き、道標がある布田道に出たら右折する。「みどりのゆび」が管理する里山(竹林含む)が広がり、少年野球用のグランドも見えてくる。

写真3:みどりのゆび管理地前の道標
みどりのゆび管理地前の道標

⑤関屋の切り通し

山を切り開き、人馬を通れるようにした「切り通し」がある。調布の布田宿から小野路までの間道である布田道の重要な場所であり、幕末、小野路在の小島鹿之助が、自らの道場の剣道指南として招いた天然理心流の近藤勇や土方歳三などが通った道と言われている。

写真4:関屋の切り通し
関屋の切り通し

⑥一本杉公園とカフェ

左に曲がり、多摩市・一本杉公園に入る。右手には恵泉女学園大学のキャンパスが見える。池の側にトイレがあり、休憩場所に適している。道なりに歩き階段をのぼって車道に出たら、すぐに石畳の道を左に入る。その後、丘を下るように歩いて行くと、左手にピアノカフェ・ショパンが見えてくる。ピアノの生演奏を聴くことができる洒落たカフェである。カフェを通り過ぎ、下りきると、小野路宿通りに出る。

写真5:ピアノカフェ・ショパン
ピアノカフェ・ショパン

⑦小野路宿里山交流館

江戸時代の宿通りがそのまま自動車道になっている。小野路町内会などが中心となった小野路宿通り街づくり協議会が、2004年から歴史的景観を保全しながら、地元住民と都市住民の交流が図れることを念頭に整備活動を行ってきた。2009年からは都市再生整備計画に基づき、水路や黒の板塀の設置を行うなど、当時の景観を取り戻そうとしている。また、宿通りの角にあった旅籠「角屋」を町田市が買収し、建物(母屋は大正14年上棟)を改修・移築して、2013年、官設民営の小野路宿里山交流館が開館している。里山交流館では、小野路の里山に関する情報提供や、地場産野菜の販売、郷土料理の提供などが行われている。

写真6:水路と板塀
水路と板塀

写真7:小野路宿里山交流館
小野路宿里山交流館

⑧帰路

別所バス停から里山交流館までは、約5.4km、2時間半程度で歩くことができる。鶴川駅9時30分頃のバスに乗って別所に行き、そこから歩けば、ちょうど昼ご飯頃に小野路宿里山交流館に着き、郷土料理を楽しむことができる。帰路については、里山交流館近くの小野神社前バス停から、鶴川駅や多摩センター駅に行くことできる。また、時間があれば、里山交流館の裏にある小野神社から小野路城跡や奈良ばい谷戸などを巡るコースを歩くのがおすすめである。ルートマップは、みどりのゆびから購入する(『多摩丘陵Footpath1』)か、里山交流館で入手することができる。

2019年3月6日公開

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