赤線・青線と入会権

 日々私たちが歩いている道路は、そのほとんどが公共物(国有財産法に基づく)です。例えば、「国道・県道・市道」は道路法(昭和27年法律第180号)が適用される「法定」公共物ですし、また「一級河川・二級河川・準用河川」は河川法(昭和39年法律第167号)が適用または準用される「法定」公共物です。一方で、公共物でありながら、法律の規定がないものがあります。公図(不動産登記法17条)の上でも地番がありません。そのような公共物を「法定外」公共物(長狭物)と言います。法定外公共物の多くは、明治時代に公共物に関する法律が制定されていく中で、その範疇に含まれなかった地区住民の日常生活に密着した「道」や「小川・水路」です。
 公図での色分けから、道路法の適用がない道路である里道を「赤線」、河川法の適用のされない水路を「青線」とも言います。赤線も青線はながらく国有財産(国土交通省管轄)でしたが、地方分権推進の一環として2005年3月末までに市町村に譲与されています。ただし、自動的にすべての赤線・青線が譲与されたわけではなく、市町村が公図に基づき必要なもの(機能を有するもの)を国に届け出をして譲与されています。それ以外のものは用途廃止(普通財産化)となりました。 (注1:上記写真は身延町北川地区花柄沢の処分場建設予定地内の赤線)
 例えば、赤線は、その付け替えや払い下げを受けようとする場合、地域生活に関わる道路であることから、原則、隣接地所有者及び地元土地改良区代表者等の全員の同意が必要となっています。たとえ、現在は使用されていなくても、将来使用されうることから、現在の使用状態如何に関わらずでです。その意味で、地盤は市町村有であることから、地役入会権に近い構成内容を持った権利があるとも言えるでしょうか。
 赤線・青線に関する裁判はいろいろありますが、山梨県南巨摩郡身延町では、同町内にある民間企業(株式会社山の都)が一般・産業廃棄物管理型最終処分場(埋立容量93万m3:72%が「焼却灰」「煤塵」)を建設しようとしたところ、その山中には赤線・青線があったことから地元住民・自治体と業者の間で係争となっています。処分場建設に伴う起こりうる環境問題や裁判の詳細(主に人格権を争点としている地元住民が県に対して起こした「廃棄物処理施設設置許可処分取消訴訟」)等については、みのぶ緑と清流を守る会のHPをご覧下さい。 (注2:下記写真は旧下部町(現身延町)のあちこちで見られる産廃処分場建設に反対と書かれたのぼり旗)
 本係争における赤線・青線問題は、処分場予定地である花柄沢の底地部分、赤線約847 m2、青線約1,639m2についてです。計画通り廃棄物の埋立を始めると、それらが使用不可能になるので、占有許可か付け替えの手続きが必要となってきます。しかしながら、付け替えをするには処分場に反対している関係者の土地である寺有地や入会地に必ずかかるため新設は困難であり、そのまま埋立をして占有するには身延町公共物管理条例(平成16年9月13日条例第173号)で「使用期間は最高10年(第6条)」や「使用後は元の状態に戻す(例外有り:第14条)」などの項目があることから、赤線・青線によって事業が進捗できない状態です。事実、2006年2月20日、身延町は「赤線・青線の使用」を不許可としています。ちなみに、同年10月9日、業者は身延町に対して不許可処分取消請求訴訟を起こしています。
 地区住民の日常生活に密着した道路・水路として利用されている/いた赤線・青線は、入会権のような法律に明記された形での地域住民にとっての権利はありませんが、地域の生活にとっては必要不可欠な資源であり、一方で不必要な地域外から押し寄せる開発を止めうる手段として認識できるでしょうか。

身延調査の写真はこちらをご覧下さい。

2007-02-10