足尾銅山と世界遺産

もうかれこれ5年目になりましたが、5月中旬、ゼミ生(2年生のみ)を引き連れて、渡良瀬遊水地と足尾巡り、植林準備のボランティア(足尾に緑を育てる会主催)をしました。昨年と比べて大きな変化があったのは、足尾銅山を世界遺産(適用種別:産業遺産・文化的景観)として登録する活動が本格的に始まったことでしょうか。2007年9月26日に日光市と栃木県が、文化庁に対して、「世界遺産暫定一覧表追加記載提案書」を提出しました。提案書を見てみると、提出時点では、足尾銅山に関係する建造物などはほとんど法的な保護の対象になっておらず、悪く言えば放置されている状態だったことが伺えます(ほんの一部ですが、登録有形文化財(建造物)、市指定史跡や建造物はあります)。やっと、世界遺産登録運動の流れの中で、2008年3月、国の史跡(足尾銅山跡、通洞坑、宇都野火薬庫跡)に指定されました。
徐々に保全活動が広がっていくことは重要なのですが、現実には、一部の関連の建造物の傷みは激しく、近々に何らかの手を打つべき状態でしょうか。たとえば、古河の私有地内にある本山製錬所(写真参照、2008年5月撮影、クリックすれば大きくなります)は、毎年、見る度に損傷が激しくなっているように思えます。私企業にとって、負の遺産は、積極的な保全対象にはならないのでしょうが、観光地化した通洞坑等だけではなく、精錬所や選鉱所も朽ち果てるがままにせず対応するのが、本当の社会貢献活動であり、厳しく言えば企業の存在をかけた義務行為でしょう。

本山精錬所